2006.01.10 Tue
髪結いの亭主 (DVD)

仕立て屋の恋のパトリス・ルコント監督作品。前作同様、頑なで不器用な男の愛を描く。この監督はこの手の女々しい男を描くのがめっぽう好きらしい。自分なりの愛に生きる男の純粋さと切なさを、静かだがくっきりと映し出す。
【髪結いの女と結婚するのが夢だった。
幼い頃初めて愛した髪結いの女を今でも思い出す。
それは初めて触れた死の記憶でもある。
年を取り夢を叶え、毎晩散髪台で女を抱く。
女の胸に包まれながら、幸福感に抱かれる。
それは至福の時間。
初めて愛した女を今でも思い出すように、
記憶の中のその時間はいつまでも鮮明で、
だから今日も、変わらずに踊り続けることが出来る】
うぅん。非常に感想を書くのが困難な作品です。決して難解な映画ではないけれど、観終わった後に残るのはなんとも言えない複雑な心境。
二人の愛は確かだった。だからこそ女は不安に駆られた。閉ざされた世界での愛だからこそ一際強く捉われたのかもしれない。愛に付き纏うのは不安と孤独。そのことを二人とも良くわかっていた。だからこそ下した女の決断だし、それを受け入れた(受け入れざるを得なかった)男。
少年期の陰鬱な性欲や妄想の描写はとてもリアルで共感するところが多かった。ああいった妄想で少年というのは悶々とした夜を送るものですよね。その暗い感情をあそこまでリアルに映したのは凄い。
結婚後の二人にも、はっとする会話が多く引き込まれるものがあった。
【「ひとつだけ約束して。愛してるふりだけは絶対しないで」】
それは愛し合う二人が例外なく持つ感情のひとつだろう。
そして彼女は最後にこう記す。
【「あなたが死んだり、私に飽きてしまい、優しさだけが残ってしまう前に」】
いつか訪れるであろうそんな日々を迎えるのは辛すぎる。だからこそ、今この幸せの絶頂で、死を選ぶ。
とても理解できるし、共感できるし、説得力がある映画だった。フランス映画的雰囲気も決して嫌いじゃない。
だが観終わった後にはぼんやりとしたものしか残らなかった。それは多分、彼女がいなくなってからの彼の感情がうまく伝わらなかったからだと思う。もう少し時間を置けば、また感想も変わってくるのかもしれないですが。
(1990年/フランス/パトリス・ルコント監督)
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