2004.11.07 Sun
仕立て屋の恋 (DVD)

【シャツの皺を嫌う。
靴の汚れを嫌う。
糊の利いた黒のスーツだけを纏い、
夏でも上着を脱がない。
煩わしい人間関係を拒み、
昼間は黙々と服を仕立て、
夜中覗くのは決まって同じ部屋。
近づこうとする女を拒む術はなく、
指で触れて恍惚とする。
他者に罵られようと、
暴力で脅されようと揺るがないものは、
例え女に欺かれようと揺るがない。
最後のその瞬間まで、
それは揺るがない】
陰鬱で、屈折して、だが確かに一人の女を愛した男の孤独な物語。
彼女の服の匂いを嗅ぎ、毎夜部屋を覗く彼は確かにまともではない。彼女が体を許してそこにいても、彼は服の中に手を入れるだけで抱くことはしない。自己完結的で、エゴイスティックで、だがそれでも彼の愛が真実のものであることに変わりはない。
彼女の恋人が彼女を利用したように、彼女もまた彼を利用する。
そして彼はそれを受け入れる。
愛する人のためには全てを捧げられても、他人には恐ろしく冷酷になれるのが人間だ。
【「僕は君を憎んではいないよ。ただ、死ぬほど悲しいだけだ」】
切ない。切なくて切なくて切ない。でも切ない。痛いほどに切ない。
やり場のない男の鬱々とした感情を、この一言で強烈な程鮮やかに、だがあくまでも静かに浮き彫りにした。濃密で暗ーい80分。残るのはただ切なさ。恐ろしい映画だ。
| 映画 ☆☆☆☆ | 00:47 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑
