2005.12.21 Wed
ある子供 (恵比寿ガーデンシネマ)

監督のダルデンヌ兄弟は96年「イゴールの約束」でカンヌ映画祭の国際映画連盟賞、99年「ロゼッタ」でパルムドール、02年「息子のまなざし」で特別賞を受賞している。そしてこの作品では再びパルムドール。出す作品がことごとくカンヌで賞を受けている巨匠なんです。
この作品を見終わった後は、なにか物足りなさを感じた。なんだかは分からないけど、なにかもう一歩踏み込んで欲しかったような物足りなさ、かな?
でもきっとそれがこの監督の味なんだろうとは思ったし、時間が経ってから思い出すともっと、いい映画だったなって思える気がした。
この監督の映画は初めて見たけど、確かに、巨匠と呼ばれるだけあって独特の色がある。他の作品も見てみようと思いました。
物語は、恋人に子供が生まれた男のお話。
【父親になることになんて興味がなかった。
だから子供を売った。
金があれば、またしばらくは楽しくやれるさ。
その程度の認識で。
そんなに怒らないでくれよ。
たいしたことじゃないじゃないか。
侘びる彼に、彼女はもう振り向かない。
閉ざされたドア。空っぽの財布。容赦ない借金取り。
生まれ変わるよ。
そう軽々と口にする彼に、生まれ変われる気配など微塵もない。
空っぽの乳母車を押す彼はとても寂しげで、孤独だった。
だが彼は、その乳母車をも金に換え、再び過ちを繰り返す。
転がり落ちる人生を食い止める術を、彼はまだ知らなかった】
彼はあまりにも身勝手で幼稚だ。深く物事を考えず、自由に生きることを尊重する。危機感のなさ、恣意的性格。まさに現代の若者だ(共感するところが少しはある)。それを大げさな演技や演出や説明なく、静かに、ただ映す。手軽な教訓も同情もないし、感動を誘うわけでもない。
その証拠に、映画のラストは唐突だ。彼は過去を悔い、今度こそ本当に生まれ変われるだろう。二人は言葉のいらない領域で分かちあった。でもあの後の展開こそが、見ている側の多くの人間が涙を誘われる部分であるはずなのに。一人の人間の成長を描いた映画なのに、この映画が見せてくれるのはその過程のみだ。
しかし、だからこそ映画が終っても二人の物語はずっと続くのかもしれない。彼は必死で働き、息子を愛す。そんな未来の彼の姿が目に浮かぶ。
人は経験からしか学べないという。そうなのかもしれないな、と思った。
(2005年/ベルギー・フランス/ダルデンヌ兄弟監督)
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