たいようの映画の感想

映画を観て感動しても、少し時間が経てば結構忘れてしまうんです。そんな忘れんぼうな自分のための記録なんです。

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【音楽】音楽の魅力とそれにより日々失ってきたかもしれないもの

 僕は音楽があまり好きではなかった。
 別に嫌いなわけではない。物心ついた頃から音楽はそばにあったし、満ち溢れていたし、好きとか嫌いという区別なしに、音楽はどこからともなく耳に入って来ていた。多くの人たちがそうであるように。
 ところが中学や高校あたりから、妙に音楽に詳しい奴というのが登場し始める。学校に来る時はいつも巨大なヘッドフォンを装着し、手にはディスクユニオンのビニール袋。背中にはギター。財布の中にはポイントが溜まりきっているHMVのカード。そんな奴が学生時代はクラスにひとりはいた。多分。
 僕はよく分からなかった。そこまで音楽に、音楽のみに傾倒する人の気持ちがよく分からなかった。それに「音楽をいつも聴いている」「音楽に詳しい」ということがまるでひとつの個性であるかのように(個性であることは間違いないのかもしれないけれど)、ひとつのファッションや知性を示すアイテムであるかのように、己のアイデンティティを必死で守るかのように、頑なに音楽に精力をつぎ込んでいるように見えた。
 音楽そのものへの傾倒ではなく、音楽を聴く自分、音楽に詳しい自分への傾倒と陶酔。
 僕にはそんな風に思えた。

 音楽をかけるということは音楽を聴くということであり、音楽を聴くということは読書をすることも思案することも出来ない状態である。耳から入る歌声は言葉として頭に響いて他の思考を容赦なく寸断させる。 
 決して音楽が嫌いなわけではないし、詳しくないわけでもない(なにせ音楽誌は昔から大好きなのである)僕があまり音楽にのめりこむことがなかった理由はこれに尽きる。学生時代から今まで、いくつかの路線やジャンルの嗜好を経て僕が僕が音楽に下した結論はこれだった。


 ☆  ☆  ☆


 ところが、である。
 僕は昨年、アイポッド的なものを買った。電車の中では聴かないが、駅まで歩いている時はいつでも音楽を聴くようになった。ただぼんやりと歩いているその数十分の間だけでも、聴いていたいと思うようなミュージシャンに出会ってしまった。
 これは我ながら驚くべき変化だった。
 そしてロッキンオンのバックナンバーを10冊ほどまとめて買った。
 (この辺の動機はまたいつかガリガリと書こうと思います)

 その10冊をごっそりと読み終えた頃、さすがに少しそのミュージシャンにも飽きてきた。家にあるCDはどれも聞き飽きてしまったものばかりだ。
 今までの僕であれば、ここでまた音楽熱は下降線を辿り、再び音楽過疎が進んだはずだ。だが僕の手にはアイポッドがあった。今やクリックすれば音楽が安価で買えてしまう時代なのであった。なんていう便利さ! しかもロッキンオンを読み漁った直後で、買いに出かけるには億劫だけどちょっと気になるアーティストはゴロリゴロリと存在するというタイミング。
 クリックの連続である。


 ☆  ☆  ☆


 音楽はさまざまな力があると思うし、実際それは多くのアーティストによって充分に示されてきたことだ。
 だが同時に、音楽だけに力があるわけではないと、僕はいつも強く思ってきた。
 (別に誰も「音楽だけに力があるんだ!」なんて言ってないけれど…)
 映画にだって小説にだって絵画にだって彫刻にだって芝居にだって壮絶な力があるのだ。きっと。間違いなく。
 しかし、である。
 同時に数万の人の手を振り上げさせ、跳ねさせ、声を張り上げさせるものが他にあるだろうか。それも数十分や数分で、である。
 ない。
 人が本気で精力を傾け、これでなくてはならない、今これを創り上げなければならないという切迫感に駆られ創り上げられたものというのはどんなものであっても、人を感動させ、人の心を揺り動かせ、よもや世界を変えるような体験を人にもたらす。
 だけれど、これほどに瞬発力を伴い人を動かすものは、他に類を見ないのである。
 (そしてこれほどに高速度で消費されるものも他に類を見ないのである。)
 ああ、音楽のなんと偉大なことか。
 23歳にしてようやく、音楽というものの奥深さやパワーや切なさや哀しさを理解し始めた僕です。


 ☆  ☆  ☆ 


 音楽が持つ壮大にして壮絶なパワーなんてことは、もううんざりするほど昔から語られてきたことなのだと思う。
 だが、僕はこうも思う。
 音楽とはある意味では目隠しと同様ではないのだろうかと。
 
 電車の中でギュウギュウに詰め込まれる苦痛を音楽は多少なりとも解消してくれるかもしれないけれど、電車のアナウンスすら書き消してしまう。もしかしたら隣に憧れの異性がいて、「ずっと好きだったんだ」と耳元で囁かれたとしても、聞くことが出来ない。
 
 僕は今でも電車の中では音楽は聞かない。だけど、歩いている時はほぼイヤホンをしているようになった。
 好きな音楽を聴くということはまさに幸福な時間だ。さらにどんな場所でも聞くことが出来るということも、音楽好きには幸福以外のなにものでもない。

 しかし、しかし。
 これは僕自身の話だが、不思議なもので、いつでも音楽を聴ける状況に慣れてしまうと、今度は音楽がないと何か物足りなくなってくるのである。
 だったら常に聴いてればいいとも言えるが、そうはいかない。大問題だ。少なくとも僕にとってはとんでもない大問題だ。

 常に音楽を聴くということは、常に誰かの言葉を聴いている状態だと僕は思う(もちろん音楽の聴き方は人それぞれなので一概には言えないけれど)。
 人の言葉に耳を傾け続けるということは同時に、自分の言葉を殺している状態だ。話を辞めない相手に話しかけることは出来ない。音楽を聴いている時間、感情は生まれても、自分の言葉は生まれない。
 
 と、僕は思ってしまうのだ。

 高校の頃の、巨大なヘッドフォンをしてディスクユニオンの袋をいつも持っていたあの人は今、自分の言葉を話せているんだろうかと、自分の思いを胸に秘めているのだろうかと、ふと考える時がある。


 ☆  ☆  ☆
 
 
 僕は、大好きな音楽を聴きながら駅までの道程を軽快に歩く。
 ただぼんやりと歩いていた時間が、音楽により最高に楽しい時間へと変わる。 

 だけど、音楽よりも素敵ななにか、例えばどこかで猫が泣いていたり、葉がさざめく音がとても綺麗だったり、大好きなあの子がずっと遠くから僕に向かって助けを求めていたり…、そんな大切な何かを、いつでも聞ける音楽よりももっと耳を澄まさなければならない何かを、聞き逃しているのではないか。聞き逃してしまっているのではないか。
 そんな想いに、つい捉われてしまう時がある。

| 音楽について | 05:02 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

音楽への思いをたくさん語ったね。
音楽に関わらず言えることな気がする。何か1つのもので全てを語ろうとするように見える人の世界はとても狭そうに映り魅力が薄れるからね。でも私音楽て素敵とよく思うんよ。文章の世界と同じように音楽も目に見えない世界にあるから、自分の内と毛細血管みたいな感じで混ざるように感じる時がある。まあ好きとか言いながらそうたくさんの種類を聴いてないし雑誌も読まへんのでわからんけどね、でも、素晴らしい音楽は本当に素晴らしい。
どっちにしろ、iPod的なものは中毒になるのは確かやね。自然と耳に入るはずのものを聞き取れなくなったら困ると私も時々イヤホンを外す。でも意図的にはずさなくても自然と欲してる気もする。からまだ大丈夫やねん。

| め | 2008/01/19 00:33 | URL |

音楽は想いを閉じ込めてくれる。
聴いていたときに感じていた感情、詩に乗せた自分の想い。
その思いは写真やモノに込めた想いが次第に疑わしくなったり薄れて行くのとは異なり、一瞬一瞬の想いを固めて自分の箱の中に詰め込んで閉じ込める。
(流れる言葉が一瞬だからなのでしょうか。。。)
そしてそれを聴いたときに箱の蓋が再び開いて想いが溢れてくる。
ある音楽を聴くたびにそうなります。
心に今でもいる人が聞いていた音楽はその人の面影、雰囲気、動作までも私の中に呼び起こす。それは忘れたくないものだから呼び起こしてくれるその音楽の箱は大切。でも聴く度に締め付けられる。ギュって。
偶然、生活の節目のときに聴いた音楽は何度も何度もあたしの目から雫を落とす。あたしを励ましてくれるのも確か。心地よい感情が箱には詰まってる。でもあたしを無意にするのも確か。箱の中にはあたしが見えない何かが詰まってる。
音楽の知識も想いも浅い。
でも何かしら音楽に心を軽くさせられ、助けられています。
あたしも最近ですが。。。
きっと音楽に対するものは、抱くものは違ってるのでしょうが、広い括りで音楽に何か想うという点では一緒のように思います。
そして音楽に触れていなかった時間に何かを失っていたと、置いてきぼりにしていたと想うのも。
でも、それもきっと音楽が何かを抱かせてくれるということを自分の中で見つけて認められるようになったから。その今だからこそ、そう思えるのかなって。

音楽、音。
生活の中に溢れているそれに自分を委ねてしまいたいときがあります。

| uu | 2008/01/24 03:45 | URL |















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