たいようの映画の感想

映画を観て感動しても、少し時間が経てば結構忘れてしまうんです。そんな忘れんぼうな自分のための記録なんです。

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恋愛睡眠のすすめ (シネマライズ)

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 観たい夢を観ることが出来たら、それはどんなに素適なことだろう。
 でもそれは同時に、どれだけ儚いことだろう。

 "記憶の中を逃げ回る"なんていう独創的で、それでいて緻密に練られた脚本と独特の映像が話題を読んだ前作「エターナル・サンシャイン」のミシェル・ゴンドリー監督。今度は自ら脚本を書き下ろしたということで、どんな物語を語ってくれるのかと期待していたら、なんてことはない。
 大人になりきれないオトコノコの、悲しくて切なくてやるせなくってワガママな心の内側のお話。
 チャーリー・カウフマンほどの緻密さや大胆さはないかもしれないけれど、妙な親近感とリアルがある映画だったと感じた。


 世知辛くて上手くいかない現実と、自分が神様の夢の世界。
 好きになった人へのアプローチに悩む彼は、夢の中でばっかり王様気分。
 彼は現実の世界で彼女になにか言われるたびに引きこもり、自分が観たい夢を創る。交互に入れ替わっていたはずの夢と現実はいつからか混じり合い、その境目が観客には見えなくなる。
 僕らは彼の自慰のような夢と妄想を見せ続けられる。

 夢の世界では、まさにゴンドリー風の映像が展開される。ハンドメイドの世界は可愛くて、お洒落で、絵本のように幼い。このあたりの映像のセンスや、料理番組風に夢を創る過程を見せるオープニングなんかは、さすがゴンドリーといった感じ。ほんとに素適な映像を撮る人だと思う。
 
 監督が描いた"大人になりきれないダメな男"は、紛れもなく監督自身であるのだろうが、それは同時に、僕ら全ての男性に当てはまることでもある。
 いつまで経ったってオトコは子供で
 嫌なことがあれば布団を被ってふて寝で
 憧れの女性を想像で何度も抱いて
 母親には何も言い返せなくて
 下らないもの作っては自慢して。

 この映画は、男と女で感想がだいぶ違ってくるだろうと思う。
 女の人は、ガエルが演じたダメ男に「カワイイー」なんて思ったり、素直になれない彼女に共感したりするんだろう。
 素直になれなくてすれ違って空回ってばかりの二人を、ちょっぴり応援したくなるような気持ちになったりするんだろう。

 男としては(というか僕としては)、切なくて痛々しいお話だ。

「ただ君が僕を好きになってくれないだけなんだ」

 なんて台詞、決して言葉にはしないけど、誰でも一度は思ったことがあるはず。

 本当に好きな人に夢の中で出会えたとしたら、それはどんなに嬉しいことだろう。だが現実の世界で叶わぬ思いなら、目が覚めた時に悲しさは倍になってやってくる。
 夢だと分かっていれば、ずっと覚めないでほしいと必死で願うだろう。だが夢は必ず覚める。
 
 結末はそれまでの展開にマッチして可愛く、ハッピーエンドで締めくくられる。
 でもどこか切ない。
 それは、独特の映像とユーモアを用いて素適なファンタジー映画に仕上がっているので分かりづらいが、それらを抜いて語っていることだけを取り上げてみると、オトコの情けなくてしみったれた言い訳と逃避行だけが描かれた映画だからだろう。
 彼のダメっぷりや滑稽さが、まるで自分自身を観ているような、そんな嫌な感覚が常にあった。
 
 だからと言って映画自体嫌いでは全然なくて、よくもまぁそれだけの内容をここまで面白可笑しく描けたものだと思う。

 まぁ、オトコなんてみんな滑稽で格好悪いんだぜ、ということ。
 それにガエルだったからまだ見栄えがよかったけど、現実のオトコってのはもっとブサイクなんだぜ、ということ。 

 それにしてもガエル・ガルシアが珍しくはっちゃけた役柄で、奇しくも同じ公開日となった「バベル」とは、180度違うキャラクターなんだろうな。
 あと、タイトルは(様々な事情があるんでしょうが)原題のままのほうが絶対よかったと、強く思う。

(2006年/フランス・イタリア/ミシェル・ゴンドリー監督)

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