たいようの映画の感想

映画を観て感動しても、少し時間が経てば結構忘れてしまうんです。そんな忘れんぼうな自分のための記録なんです。

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ダーウィンの悪夢 (渋谷シネ・ラ・セット)

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 かつてないほどの衝撃作として話題になり、ドキュメンタリーの歴史的傑作とも称され、'05年度のオスカーにもノミネートされた作品。

 これだけ話題になった作品なので、内容について今さらどうこう説明する必要はないと思うのだけれど、確かに、衝撃的でセンセーショナルな作品ではある。「悪夢のグローバリゼーション」と謳われれば、確かにそうかもしれないと納得する。

 ヴィクトリア湖では何十トンもの魚が採れるのに、それを食べるのは欧米や日本。
 ヴィクトリア湖周辺を初めとしたアフリカ各国では深刻な貧困が存在する。
 ナイルパーチの加工過程は衛生そのものです、という工場関係者。
 だが加工後の魚の処理過程において死骸から発生したガスにより視力を失ったものもいる。

 搾取されるものと、搾取するもの。
 今やその両者はお互いにお互いの顔を観ることがない。
 だからこそ、搾取されるものは実態も分らぬままもがくばかり。搾取するものは様々な言い訳を用いて目を背け続ける。
 よい意味ばかりで用いられる「グローバリゼーション」だが、これもまた、グローバリゼーションのひとつの結果なのかもしれない。

 鑑賞後帰宅して色々調べてみると、以外にも批判的な意見が多いことに気が付く。多くはアフリカに詳しい人たちであり、この映画はあくまでもタンザニアの一部分を切り取った一義的なものに過ぎない、という反論だ。恣意的ででたらめな情報が紛れている、という意見もある。詳しいことはよくわからないが、専門家がそう言うのだからそうなのだろう。
 
 だが、というかそもそも、ドキュメンタリーだからと言ってそれが客観的で公正な真実であるはずがない。ある世界を切り取りカメラに記録する以上、カメラを向ける場所も、フォーカスも、編集にも、全てにおいて政策側の意図が含まれる。どんなに客観的な映画にしようと試みても、完璧な中立など有り得ない(と、広告批評でドキュメンタリーの特集が組まれていた時に読んだことがある)。
 そして当然、この映画の製作者がどんな意図でこの映画を撮ったのかを僕らは知る術がない。

 この映画は劇場で公開されるひとつの映画として考えてみた時、決して画的に質の高い映画とは言い難いという問題もある。扱っている内容はセンセーショナルかもしれないが、画質は荒く、現地民にインタビューを繰り返すだけの単調な作りで退屈もするし、ショッキングな内容で人を呼び、直接的にショッキングな映像とインタビューで緊張感を保たせていただけのような気もする。

 だが大切なのは、例え(タンザニアの現状を現実以上に悲惨に見せるような)恣意的な意図が含まれていようとも、ひとつの事実を映していることは確かなのだ、ということだと僕は思う。
 そしてそれは、先進国とその国民が目を背けて来た、もしくは目を向けようともしなかった、重大なひとつの事実だ。

 現実のタンザニアがどうあれ、映画以上に悲惨な現状はいたるところにあるだろう。

 あまりにも無関心な人々に、こういった事実を知らせるというだけで映画はひとつの可能性に満ちていると思うし、(事実を知るだけではなんの解決にもなりはしないかもしれないが)大きな意味を持つものだと思う。
 それはこの映画に過剰な演出や恣意的な意図が含まれていたとしても同じことだ。
 そしてこうも思う。
「ホテル・ルワンダ」を観た時にも強烈に感じたことだが、結局はただ知るということがひとつの可能性となってしまうほどに、僕たちは無知であり、その生活はこの映画の舞台となった人々とかけ離れてしまっているのである。

「知ることに意義がある」のではない。
「知ることが第一歩」にならないといけない。
 
 だが(こんな風に偉そうなことを言いながらも)事実を知ったからと言って、小銭程度の募金をするのが関の山の自分もいる。
 開発援助や子供支援等のNGOに参加している知人も数人いるが、彼らを尊敬し応援するだけでは、本当はいけないのだろう。
 ではどうすればいいのか。どうすることが正しいのか。
 それは情けない話だが、今の僕にはどう頭を絞っても、むしろこういった事実を知れば知るほどに、さっぱりわからなくなってしまう。


《参考》
 公式サイト「ダーウィンの悪夢」
(映画を観れなくても公式サイトを一通り見れば大体の内容は把握できるようになっている)

 専門家ぽい人たちの意見
progressive link「ダーウィンの悪夢についてのいろいろ」
ダルエスサラーム便り「ダーウィンの悪夢」
吉田昌夫「フーベルト・ザウパー監督による映画『ダーウィンの悪夢』について」


(2004年/オーストリア・ベルギー・フランス/フーベルト・ザウパー監督)

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