たいようの映画の感想

映画を観て感動しても、少し時間が経てば結構忘れてしまうんです。そんな忘れんぼうな自分のための記録なんです。

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スクラップ・ヘブン (DVD)

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【もっと想像力を働かせろよ。
 ――お前の敵は誰だ?】


 加瀬亮、オダギリジョー、栗山千明と若手の実力派でそして全員癖のある役者さんが揃って主演した作品。

 様々な物事に不満や葛藤を抱えた三人が偶然巡り合わせ、数奇な運命を辿る物語を、完全に現実離れしたストーリーと、ほんの少しだけ幻想や妄想の世界を思わせる映像とテンポで語っている。特にカメラアングルのセンスのよさを随所で感じた。

 バスジャックに乗り合わせたことから転がる三人の運命。
「想像力」をしきりに語り、「復讐」を描きながら重さは感じさせず、テンポよくコメディー調で前半は進む。
 これはこれで楽しかったし、すっかりそういう映画なんだと思ってしまった。

 しかし、中盤から雰囲気もテンポも一変した。
 ここからはテンポも悪く、語りたいこともよく分からなかった。
 だがかえってそれがよかったかもしれない。
「腰まで肥溜めに浸かってるよ」とシンゴに向かって言ったテツも含め、三人はそのままゆっくり沈んで行く。 

 
 オダギリが出ている映画だと、どうしても彼に目が行ってしまう。それがいいことなのかどうかは分からないけれど、それだけ際立った存在感が確かにあるということだと思う。
 この映画のオダギリは、もう抜群だ。
 やりたい放題で演じ、なおかつその人物をしっかりと構築できているような気がした。陽と陰を隔てる濃密な影。これこそが彼の魅力なのだと思う。
「ゆれる」での真面目な芝居とも「メゾン・ド・ヒミコ」で見せる陰影ともまた違った、魅力あるジョーさんでした。

 加瀬亮に関しては、相変わらず自然な振る舞いが格好良かったけれどどこか物足りない感があり、栗山千明に関しては、恐らく脚本の段階から人物の説明が少なかったのだろうが、どうにもうまく人物を掴むことができなかった(けれどやっぱり綺麗な人で、ジョーさん並に雰囲気を持っている人だと思う)。
 そして役者の中で際立っていたのは、実は柄本明さんだったりする。


「なにも考えないで自分の意見も持たずに適当に生きてるやつがいるから世の中が悪くなるんだ。想像力が欠如したやつが多すぎるんだ」
 だからテツはこう言う。
「想像力を働かせろよ」

「誰だって不満も悩みも抱えてそれでも必死に歯食いしばって毎日生きてるんだよ。お前にはそんなことも想像できないのか」
 だから上司はこう言う。
「想像力を働かせろよ」


 内容は少し分かりづらかったし、特に爆弾に関わる事柄(栗山千明がそこに至る過程など)や幕切れなども中途半端な印象を受けたが、全体の雰囲気や役者の存在感は素晴らしかった。家で観た映画で眠くならなかったのは久しぶりだ。

 一度助けられなかった女性を今度こそ助けたいと願うも、既に全てが手遅れだったことを知った時のシンゴの叫びがいつまでも切ない。
 
 テツが諭すとおり、誰も傷つかないなんてことは有り得ない世の中になってしまったけれど、だが、誰かを傷つけることを前提としたものに正義などは有り得ない。

 そして恐らくはこの映画の大きな核となっていたであろう、テツと父親のシーン。
 あの静けさと物悲しさと砂嵐の音。
 それこそがこの映画の全てだったのではないかとすら思う。
 それほど印象的なシーンだった。



(2005年/日本/李相日監督)

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