「いつもと同じ一日だと思ってた――」 アメリカ・コロンバイン高校で起きた銃乱射事件をもとにした映画。史上初めてカンヌでパルムドール・監督賞をW受賞。監督は「グッド・ウィル・ハンティング」のガス・ヴァン・サント。
ただ淡々と、なんの変哲もない少年たちの毎日を追い続けるカメラ。美しい映像の数々とともに映し出される彼らの普通の毎日にいつの間にか忍び寄っていた悲劇。
放課後のデートを自慢している者。
ボランティアで毎日本の整理ばかりしている者。
廊下でスケボーの練習をするもの。
カメラにとりつかれファインダーばかり覗いているもの。
ことある毎にまわりの人間を小突いて周る者。
そこにはたいして惹きつけられる要素があるわけではない。だって普通なんだもん。
そして、あくまでもそんな普通の生活の延長線に、あの事件を描く。
実行犯の少年の心にあったのは、僕らが感じていた虚無感や脱力感と限りなく近いものなのではないだろうか。もしくは、まったく同質のもの。
誰の中にも、自分の中にもあるのかもしれない狂気を感じた。
「なぜ」を求める映画ではない。
「ボーリング・フォー・コロンバイン」と同じ題材ながら、全く逆の手法で事件を捉えた。
見終わった後の余韻はすごかった。この映画を通して彼らの内になにを感じたか、あの事件をどう考えるか。すべてを観客にゆだねた監督だが、それも作品に対する自信があってこそ。そして映画の中で答えを出さないから観客は答えを探そうとそれぞれの中で映画は続く。
カメラワークや時間配列など監督のすごさを感じた。インパクトは薄いけど、心にずるずると尾を引く作品。
(2003年/アメリカ/ガス・ヴァン・サント監督)