【僕は、自分が彼女のために出来ることの少なさ、小ささに、愕然としていた―――竹本祐太】 感動したとか、切ないとか、可愛いとか、そういうのも少なからずあるけれど、なによりも、楽しい映画だった。
今までの趣味や傾向で言えば、この映画は僕が好んで映画館へ足を運ぶような内容では決してない。この映画を観たいと友人に話すと、その人は「意外だなー」と漏らしていた。自分でもそう思う。
原作のハチクロは読んでいないし、内容もよく知らなかったけれど、それでも僕が興味を持ったのは、あまりにもキャストが好み揃いだったから。
蒼井優、加瀬亮、西田尚美、堺雅人。みんなかなり好きな役者さん。もっと端的に言うならば、
「花とアリス」であまりにも魅力的だった蒼井優を観たかったから。
映画館にはカップルや女子中高生のグループしか見当たらず、あんなに気まずい思いをしたのは初めてだったかもしれない。なんか、肩身狭かったなぁ。
客観的に考えると、内容も決して男一人で観るようなものではないし、普通の成人の価値観だったら(漫画なら許せても映像で観ると)もう体が痒くなってしまうんじゃないかと思うほどに、爽やかな青春もの。まず、大学生にもなれば少なからず誰にでもある性的な匂いが全くしない。片思いには付きものの嫉妬を初めとした人間臭さがない。もっと言えば、人間味がないからリアリティーがない。
だが、リアリティーがないことがその映画にとって必ずしもマイナス要因になるとは限らなかった。
物語はあまりにも陳腐だが、信じられないほどに、映画としては魅力に溢れていた。
【自分の好きな人が自分のことを一番好きになってくれる、たった、それだけの条件なのに、永遠に揃わない気がする―――山田あゆみ】 目当てだった蒼井優は誰の目にも明らかな好演だった。加瀬亮は今までわりとクセのある役が多かったように思うけど、今回は(ストーキング癖はあれど)普通の青年を爽やかに演じていた。いい味を出していたけれど、なんとなくもっと暗い役のほうが彼には似合うような気もした。また堺雅人は言葉少なに、全てを俯瞰しているような独特の表情で異彩を放っていた。相変わらずこういう表情が上手い人だ。
実は僕は伊勢谷友介の芝居が全然好きではなくて、この映画を観る際のいちばんのネックにすらなってた。それなのに、奔放な天才を演じる彼はあまりにも自然で、あまりにも上手だった。芝居云々ではなく、放つ空気がオダギリさんや浅野さんが放つそれに少しだけ似ていたような気がする。役柄がよかったというのもあるだろうけれど、これには本当に驚いた。初めて伊勢谷友介を格好いいと思った(ちなみに関係ないけど、僕と同じ高校の出身です。へへん)。
【安心しろ。今燃えているのは俺の作品じゃない。札束だ―――森田忍】 全体的に、センスがよかったように思う。
オープニングから好きだったし、劇中歌も全て映画に合っていて素敵だった。CGも控えめにしファンタジーの色合いを強くしすぎることなく、それでいて現実からほんの少しだけ浮いた、理想的青春恋愛群像のような仕上がりだった。その浮き加減も、恐らくは僕にぴったりな程度だったのだと思う。
【また僕を傷つけてしまうと? 安心してください。僕は傷つきませんから―――真山巧】 舞台が美大というのがまたツボだった。
実際にはマヤマックスが書いたはぐみの絵は生き生きとし、スランプの際にキャンバスに黒い円を描く姿も、どことなく共感できた。はぐみと森田がキャンパスに絵の具をぶちまけるシーンは瑞々しく、思わず頬が緩み、いつしか羨望のような眼差しで彼らを見ていた。二人は芝居ではない、本当に楽しそうな表情だった。
純白の巨大なキャンバスの前でヘッドホンをした小さな少女が立ちすくむ姿は、それ自体が完成された絵のようにさまになっていた。
【どうして人は絵を書くんだろうなんて、どうして人は生きてるんだろうっていうのと同じだよ―――花本はぐみ】 内容は本当に陳腐でありきたりなものだけれど、映画全体としてのセンスが驚くほど個人的嗜好と合致し、すっかり見惚れてしまったのでした。
そして、この手の映画を「いい!」と言える心がまだ自分にあったことが、少しだけ嬉しくもあったのでした。
ただひとつだけ難癖をつけるのであれば、500万もの売り値がついた作品は、もう少し厳重な設備のもとで保管しましょう。
(2006年/日本/高田雅博監督)
TBさせていただきました!!
センスある、心に響くセリフでいつぱいの映画でした☆期待していなかったのですが、観終わったあとにはかなり充実していましたよ。。。
| てれすどん2号 | 2006/08/04 18:34 | URL | ≫ EDIT