【一匹のヤモリが目を覚まし、自分が世の中で最後の、たった一匹の最後のヤモリであることがわかった。
家族や、友達もいなくなってしまった。
嫌いなものや、学校でいじめられたものなど、他のヤモリもいなくなった。
最後のヤモリは独りぼっちでとてもさびしい。
家族や友達が恋しく、敵でさえ、恋しく思っていた。
独りぼっちより、嫌いなヤモリに囲まれたほうがましだ、と思っていた。
最後のヤモリは日没をじっとみつめていた。
話し相手になるヤモリが一匹もいなければ、この世の中で生きていても仕方がない、と思っていた】
―――本編より抜粋 監督、ペンエーグ・ラッタナルアーン、41歳、タイ人。
撮影、クリストファー・ドイル、51歳、オーストラリア人。
主演、浅野忠信、30歳、日本人。(年齢は公開時)
初めて味わう感覚だったと思う。国籍も言語も超えて映画を作るとこんなものができるのか。
しかも描かれるのは偶然出会った日本人男性とタイ人女性の、言葉も上手く通じない奇妙な数日間だ。
バンコクいう地が持つ独特の空気と、浅野忠信が放つ特殊な雰囲気を、老練カメラマンが巧みに捉え、感性鋭い若手監督が繋いだ。そんな映画だったと思う。
前半の閉塞感に満ちた雰囲気の中で虚無感に苛まれた二人が出会うと、映像に少しづつ明るさと新鮮さが溢れてくる。
偶然の出会いと呼ぶには二人はあまりに似通っていて、想いが通じ合うのは必然だったのかもしれない。
時々ユーモアを交え、二人の親交を静か過ぎるほど静かに魅せた。説明なしに突拍子もない展開を広げ、突然ファンタジーになってみたりする。どんどん現実から離れていきながらも、二人が抱える悩みも想いもリアリスティックだ。
伏線も多数張られ、恐らく監督のこだわりや仕掛けが驚くほど随所に散りばめられていたのではないかと思う。
紛れもなく、観て考える映画ではなく、感じる映画だった。
間違いなく好きな種類の映画だった。特にウォン・カーウァイやチャン・イーモウなどの多くの映画を手がけてきた撮影監督の映像は、淡々と俯瞰した眼差しで心地よかった。
だがどうもしっくり来なかった。目で観て伝えたいことは理解できても、うまく感じることができなかった。おもしろい映画ではあったと思うし、見事にアートな感覚映画だ。独特の世界観はしっかりと確立されていると思う。
監督・撮影・主演の同じ三人での最新作「Invisible waves」は既に完成しており、ベルリン映画祭でコンペに出品されてもいる。好きな匂いのする監督だけに、こちらに期待したい。ちなみにその新作では浅野の相手役として
「トンマッコルへようこそ」のカン・へジョンが出演している。
(2003年/タイ・日本・オランダ・フランス・シンガポール/ペンエーグ・ラッタナルアーン監督)
ドイルの映像が好きです。たいよう君はどうでしたか?
あたしがドイルを知ったのは、矢張りウォン=カーウァイ映画でだったのだけれど、あの、引きずり込まれる映像は初体験で、眼が眩みました。
ドイルの映像には、エロスが在ると思うの。
此の映画は未見だけれど、浅野忠信とドイルってタケオキクチのプロモでも一緒にやってたね。
| あたち | 2006/07/14 03:53 | URL |