たいようの映画の感想

映画を観て感動しても、少し時間が経てば結構忘れてしまうんです。そんな忘れんぼうな自分のための記録なんです。

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初恋 (有楽町シネカノン)

[若干のネタバレあります]

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【あの頃私たちが抱いていた感情はなんだっただろうか。

 憎しみ、怒り、それとも焦燥感?
 それって、なにに対しての感情だったんだろうね。

 世間は下らなくて、汚くて、退屈で。
 だけど、あなたといるときだけは違うって思ってた。

 あなたといるときだけは違ったんだよ。

 だから私は今日も、こうして待っている。

 時代は変えられなかったけれど、
 世間はいつか忘れてしまうだろうけれど、
 
 私は忘れることなんてできない。

 生まれて初めて、私を必要としてくれたあなたのことを。
 生まれて初めて、私に恋してくれたあなたのことを】
 

 この映画は恐らく、「ホテル・ルワンダ」と並んで今年一番と言ってもいいくらい、映画の出来に期待して劇場へ足を運んだ映画でした。
 扱うテーマは非常に興味深かったし、そのアイデアだけでももう感動できてしまう。それにトレーラーがすごくよかった。あれだけでちょっと涙腺を誘われそうになる。

 正直、期待しすぎたのかもしれない。

 僕は四十年前の街並みなんて実際見たことないけれど、スクリーンを通してみる限り、その街並み自体は自然に映っていたように思う。当時の時代を生きていた人にどう見えるのかは分からないが、僕としてはむしろ魅力的にさえ思えた。
 
 だが、冒頭からなにかがギクシャクとしている。なんだろう。
 そしてその違和感が最後まで払拭されることはなかった。ギクシャクし通しだった。
 観終わって感じたのは、なんという中途半端な映画に出来上がってしまったのだろうか、ということ。

 一体この物語のどこに焦点を当てようとしたのか。原作を読んでいないのでなんとも言えないけれど、登場人物たちがいまいち立っていない。確かに適度で均一に脇役のそれぞれを描いてはいるけれど、それでも妙にその脇役たちがいいポジションに位置している。みすずの兄もそうだし、その彼女もそうだし、バイク屋のおじさんもそう。中途半端に描写され、中途半端に見せ場があるせいで、結局感情移入もできない。

 主人公二人に関しては上手に背景の説明もしていたけれど、いかんせん、宮崎あおいに頼りすぎではないだろうか。
 宮崎の魅力を撮りたいという意欲は感じた。でも、なんだか役者の生殺しだな、という印象を受けた。工夫あるアングルなわけでもなく、ずっと宮崎の表情をアップで捉え続けるシーンが何度かあった。なんというか、それらのシーンでの宮崎は全然魅力的じゃなかった。もっと自然な場面、例えば小出と車に乗っているシーンなんかは相変わらずとっても瑞々しくて可愛いのに。
 
 そしてテンポの悪さも際立った。強奪事件が動き出した後半は良かったが、前半は退屈だった。
 兄とその彼女が別れるシーンも、終盤での兄の不幸のシーンも、いまいち彼の人物像が掴めていないからしっくり来ない。

 多少現実離れした設定ではあるから、事件に関して現実味が薄れてしまうのは全く気にならないとしても、強奪計画の実行中にいくつかハプニングを起こして観客をハラハラさせておき、「ターゲットの車も運よく遅れててちょうどよかった」ってな具合で収めるんだったら、最初から何事もなく無事に成功させてくれたほうが余程いい。

 悪いところばかり挙げてしまいましたが、僕にしては珍しく、色々な点に文句を言いたかったんですよ。大きな期待の裏返しです。

「三億円事件の実行犯は18歳の少女だった」
 その設定はものすごく魅力的で光っていたし、「女であり、免許を持っていないが車を運転できるお前なら、警察を欺ける」というのも説得力がある。事件の結末も非常に切ない。もしかしたら、舞台裏では本当にあんな取引があったのかもしれないとも思える。

 だからこそ、なのに何故、という気持ちが一層強くなる。最後に宮崎がふいに日記を見つけ涙を流すシーンも、ちょっと突拍子なくついて行けなかった。もう少し、やりようはなかったのだろうか。

 宮崎に関しては、
「今までは役に対する執着はなかったけれど、このみすず役だけは絶対に自分が演じたいと思った」
 と、なにかの雑誌で語っていたように、相当の意気込みで望んでいたようで、確かに好演してはいたと思う。だけど。
 よっぽど「害虫」「好きだ、」の方が魅力的だった。とーっても残念。可愛かったんだけどね。それは恐らく彼女の問題ではなく、撮る側の問題では、と素人目には映った。

 この原作で、塩田明彦監督や、石川寛監督が撮ったバージョンが観てみたいと思う。もしくはソフィア・コッポラとか。

 内容はとにかく魅力的なのに、どこかギクシャクとした違和感があって感情移入しずらい映画でした。
 これ以上ないほど切ない物語なのに、その切なさを感じる前に、単純なカットに飽きてしまった。
 

(2006年/日本/塙幸成監督) 

| 映画 ☆☆☆ | 22:04 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

まったくそのとうりだと思いました。

ありがとうございます。
まったくその通りだと思いました。
しかし、物語の内容は良かった。初恋ではなくて、本当はもっと壮大なスケールな計画があったはずなのに、あまりにもあっさりしすぎ。
3億円の強奪は実は計画のさわりだった。事実だと思って映画を見ると、確かにほんとうにあったはなしのような気がします。
嘘だったらもっといい話になっていたはず。原作を読んでいないから分からないけど、もっとクライマックスはましになっていたはず。

| zhang_gang | 2006/06/19 22:56 | URL |

もう一言言わせてください。

岸は一体何者だったのか、事件の真相は一体同だったのか。重要な部分はさらりとあっさり意図的にすぎて行ったような気がします。
見終わった後もモヤッと感が抜けませんでした。
この映画が事実なら、歴史のタブーに触れた映画なのでしょうか。言えない部分が後半多いのでしょうか。映画から推測すると、岸は今も生きていて、当然自民党で今はとても重要な大臣になります。
現役の大臣で手首に傷が有る人はいるのでしょうか。
ずっと悩んでいます。誰かそうだといってください。

| zhang_gang | 2006/06/19 23:27 | URL |

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| | 2006/06/20 00:15 | |

コメント有難う御座います

設定自体は面白いけど、そもそもどうしようもないくらいにフィクションだと思いながら僕は観ていたので、タブーだとかなんだとかまでは僕は全然考えてなかったですけどね。
ただ犯人が大臣の息子ということと、その犯人との取引に関しては、この事件だけに関わらず、当時の風潮なら有り得たかもしれないな、とは思います。

ひとつ上のコメントに関して。書き手の心境を想像するところまでは考えが至らなかったですね。そこを想像すると、確かに特定の誰かにあてた想いを書いたようにも思えます。その誰か対する想い、というのを、劇中ではうまく紡いでいられなかった印象です。

ただ僕は、原作は(読んでいないですが)結構有名な作家、既に充分に名前が売れていて看板作品が何作もあるような作家、が書いたものではないかと思っています。「中原みすず」という名もペンネームで素性は明かされていないし、もしかしたらこれは実話かも、という読者の期待を煽る意図があったのでは、と思います。

| たいよう | 2006/06/22 03:34 | URL |















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