
岩井俊二といえば、リリィシュシュとラブレター。そのイメージしかなったので、久しぶりに観た岩井作品に、大変に戸惑った。こんなユーモラスな作風だったっけ? というふうに。
しかしその戸惑いにも馴れてくると、やはりこれは紛れもない岩井作品だと感じる。光の露出が多くて輪郭がぼやけるような、画面の端のピントが極端にずれているような、そんな独特の映像。色が薄くそのまま背景に溶け行ってしまいそうでもあり、妙に浮き立ってふわふわとしているようでもある。不思議な感覚だ。
鑑賞前、僕はてっきりこの映画を「鈴木杏の映画」もしくは「鈴木杏と蒼井優の映画」だと思っていた。だが観ると、これは明らかに、「蒼井優の映画」だった。もちろん、これは図らずもそうなったのだろうけれど。それほどに蒼井優が素敵。この人がこんなに魅力ある役者さんだったなんて知りませんでした。
物語的な無理や、中盤の展開の遅さや、最終的に恋の結末が描かれていないこと等、非難されるであろう点は確かにある。ただこれは青春映画であるのと同時に、ファンタジーでもあるような気がした。僕は実際、大人の向けの絵本を読んでいるような気分になった。だから、僕は全然意識しなかったけれど、観終わって考えてみると、結構好みの差が出る映画なのかもしれない。
監督・プロデューサー・脚本だけでなく、編集・音楽にも自ら取り組んでいるが故の、この岩井色。背景と同程度のトーンで演じる主演二人の芝居も、わりとシュールなユーモアも、邪魔をしない音楽も、細部にまで手がこんだ監督の演出のように感じた。そして、宮本君役の男の子の不器用な演技すら、この映画にマッチしている気がしてきた。
ある程度メッセージ性がある映画(
「アメリカン・ヒストリーX」とか)だったり、アート的感覚の強い映画(
「ブラウン・バニー」とか)だったりを好む傾向がある自分の中で、ここまでに薄っぺらく、なにも語らない、ある種普通の映画を気に入ったのに、ちょっとばかり驚きました。でも鑑賞中はすごく気持ちがよかったです(酒飲みながら観たせいかもしれないけれど)。
新作が楽しみな女優と監督が一人ずつ増えましたね。
【間違っていると知りつつも、彼を失うことが出来ない花。
それは彼女なりの純真でまっすぐな想い。
徐々に膨らむ彼への想いと、友情の狭間で迷うアリス。
それは自分を上手く表現できない彼女の葛藤。
花は嘘を告白することで、真実を受け入れる勇気を持ったことで、
アリスは人前で踊ったことで、表現する楽しみを知ったことで、
きっとひとつ大人になれただろう。
一歩進んだ二人の友情は、きっと今日も明日も眩しい】 (2004年/日本/岩井俊二監督)