たいようの映画の感想

映画を観て感動しても、少し時間が経てば結構忘れてしまうんです。そんな忘れんぼうな自分のための記録なんです。

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【書評】山田詠美「A2Z」(講談社)

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 二人の間で、口づけは、いつも不測の事態。
 そして、永遠にそうでありたい、と感じた


 山田詠美、巧い。
 恋愛小説、しかも不倫、なのにとってもポップ。ポップにして誤魔化すのではなく、とても丁寧。句点を多様する文章は少し独特だけれど、テンポが遅くなることは決してなく、むしろ心地よい。ほんとに。
 
 主人公の女性の一人称で語られる物語、彼女は35歳。
 旦那のいる彼女の新しい恋の始まりと、その終わりまでを、心理描写を主に描いている。

 どんなものであっても、失うこととは辛いこと。大切なものはひとつもなくしたくない。欲張りだけど、誰だって、本音ではそう思ってるはずだ。
 長年連れ添った旦那も大切。
 知り合ったばかりの若い彼も大切。
 主人公の行動は普通に考えれば「けしからん」って思うことだけど、どうにも共感してしまう。

 新しい男と、馴染んだ男では、まるで違う種類の生き物だ。どちらが重要あるというのは別にして。失えば、どちらの場合も寂しい。急性か慢性かの違いはあるにせよ、好きになったあとでは、つらさを運ぶ

 そしてどんなに大切に思っていても、終わりが見えてしまう恋だってある。互いにそれに気付きながらも、それでも、残された時間を慈しむように過ごす二人は、とても切ない。
 このまま彼を好きでいたいと思っていても、少しづつ本来の安らぎの場へと戻っていく想い。
 このまま彼女と過ごすことは出来ないだろうと分かっていても、それでも想いを収めることは出来ない。
 理屈や理性に、感情はついて来ない。

 物語の大筋だけでも立派な作品なのに、26あるアルファベットを使い、それらを頭文字にした単語を26に分けた段落で一つづつ披露している。
 タイトルの「A2Z」は「A to Z」なのだろう。

 まぁとにかく、巧いなぁ、巧いなぁ、って何度も何度も頷いたんです。結婚て大変だな、って考えさせられました。

 夫ってなんだろう。一番自分に馴染んだ他人。
 一人きりになる恐怖をとりあえず先延ばしにする保障。〜中略
 元は、と言えば、紙切れ一枚。けれど、それが人を安心させるのは、その一枚が、雑多な人間関係の湿布薬の役目を果たすからだ。それなのに、何故、安心は安らぎを通り越して行くのか。気が付くと湿布薬は乾いている。もう自分の体にも心にも何も染み込まない。と知った時に、それは本当に、ただの紙切れになる。
 でも、そうなる前に、どうすればいいのだろう。誰も教えてくれない。保障と思い込んだものが、良くも悪くも、姿を変えて行くあやふやなものだったなんて



 色字は本文より抜粋。
(2000年/講談社/山田詠美)

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