たいようの映画の感想

映画を観て感動しても、少し時間が経てば結構忘れてしまうんです。そんな忘れんぼうな自分のための記録なんです。

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明日の記憶 (池袋シネマサンシャイン)

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【あの日の感動も、あの日も楽しみも、あの日の悲しみも。
 全部消えてしまう。
 今日という日は、明日になればもう、ない。
 
 若年性アルツハイマー。
 どんなに最善を尽くしても、努力をしても、病気は止まらない。
 治療薬がない。
 職場では指揮をとる立場だったのに、すぐに職を失う。
 同僚は最後まで優しくしてくれた。
 だが、病気は止まらない。

 妻は働き、夫を世話する。
 日を追うごとに、忘れていく夫。
「悪いのはあなたじゃない。あなたの病気が悪いのよ」
 それは自分に言い聞かせる言葉でもあった。
 そして夫婦がどんなに固い絆で挑もうとも、
 病気は止まらない。

 明日には失うであろう今日。
 明日の記憶は、今日よりもさらに小さい】
 


 いい映画だった。それに尽きる。

「ある意味では、これは僕のデビュー作なんです」
 堤幸彦監督自身そう語るように、まさに新境地、そんな感じだった。堤監督は大好きな監督の一人なのに、前作「サイレン」が拍子抜けで、とても心配でした。それだけに、この作品の出来のよさが、とっても嬉しい限り。
 カメラワークやカット割り、ユーモアセンスなど、彼独特の雰囲気も残っているものの、まるで「溺れる魚」や「ピカ☆ンチ」なんかと同じ監督とは思えない。

 渡辺謙はプロデューサーも兼務したとあり、意気込みはかなりのものだったのだろう。それでいて、なんていうんだろう、肩の力が抜けているというか、無理がない。強く訴えかけるものがあるのに、無理強いされるような感覚は覚えない。これは彼のお芝居だけでなく、映画全体の空気にも同じことが言える。

 ただ、気になった点が少々。
 冒頭の、夕日のCG。あれ、もうちょいなんとかならんものだったのかな。
 キャストについて。
 ところどころ、「どうしてこのキャスト?」と、不思議に思うことがあった。松村邦弘であったり、木梨憲武であったり、ミッチーであったり。特にミッチーは見せ場もある役だし、うまいこと演じてたけど、なぜわざわざ医者役にミッチーをキャスティングしたのか。別に嫌ではなかったし、テレビ出身の監督の人脈なのかもしれないけど、どうにも ? だった。
 そしてMCU。ミュージシャンとしては結構好きだけど、なんで映画出てるの? しかもあの中途半端な映りこみ具合。あのキャラを入れることに違和感はなかったけれど、なぜ、MCUだったのか。わからん。

 客層はやっぱり中高年が多く、男性の方が若干多かったかな?
 中盤の、会社を退職するシーンでは、周りの人もみんな泣いていたみたい。僕も、久々に映画館でわんわん泣きました。

 ただ、もっと泣かせる演出をしようと思えばいくらでも出来たはずなのに、それをせず、あくまでも佐伯と妻の物語をしっかりと語り続けた、という点が、この映画にとってとてもよかったことのように思う。
 ロングショットのラストもいい終わり方だった。結構好き。ああいうラストは。


 昨日までバリバリと仕事をこなしていたのに、今日には出来なくなっている。50歳を前に、仕事が出来なくなった自分を目の当たりにすることは、どれほど辛いことだっただろうか。
 愛した夫が、日ごとに、夫ではなくなっていく。体を丸め、幼子のように泣きじゃくる夫を見るのは、どれほど悲しかっただろうか。
 50年の歳月を要して積み重ねた様々なものが、例え自分でどんなに守ろうとしても、見境もなく、奪われていく。それがどれほど恐ろしいことだっただろうか。

 いつ、自分に起こっても不思議ではないだけに、怖い話でもあった。
 20年とちょっとを生きただけの自分にだって、絶対に失いたくないもの、思い出、それらはたくさんある。それは明日からひとつづつなくなります、そう宣告されるのはまさに絶望だろうし、佐伯が言ったように「ゆっくり死んでいく」のと同じこと。
 同じ立場に立ったとき、僕は屋上のあの柵から、こちら側に戻ってこれるだろうか、自信が無い。


(2005年/日本/堤幸彦監督)

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