たいようの映画の感想

映画を観て感動しても、少し時間が経てば結構忘れてしまうんです。そんな忘れんぼうな自分のための記録なんです。

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クラッシュ (日比谷シャンテシネ)

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【人は人と絶えずぶつかりあう。
 激しい衝突は、ときに相手を"悪"に見せる。
 偏見がそれを助長する。
 人種、国籍、宗教、社会的地位。

 衝突が絶え間ない街では、偏見も渦を巻く。
 心に刻み込まれた"悪"が新たな衝突を呼ぶ。
 衝突はまた偏見と"悪"を生み、哀しみの連鎖は続いていく。

 だが、本当の悪はどこにあるのか?

 差別主義者になるにはそれなりの理由があるし、突発的に罪を犯した青年も普段は正義感に溢れた者だった。
 全うな刑事も家族の為にその手を汚す。
 娘を愛する父も、かつては囚人だった。

 衝突はふれあいに変えることができる。わだかまりの壁を越えるきっかけがあれば、彼らは皆抱き合い、温かい涙を流すことができる】


 「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本家ポール・ハギスの初監督作品で、脚本と製作も兼ねている。
 この映画に主役は存在しない。よって脇役も存在しない。全ての人間が主役であり、彼らから見れば他の全ての人間が脇役だ。ロサンゼルスという大きな街を舞台にした、まるでその街と人生を縮図にしたような映画。
 多くの登場人物が、少しづつ絡み合いながら物語は進む。「マグノリア」よりずっとリアルに、「ラブ・アクチュアリー」よりずっとシビアに。
 その脚本には本当に感服した。大規模な話にも関わらず110分で語り、しかも無理がない。本当にどこかの街で進行していそうな話に見える。人物をしっかりと描き、それぞれに共感させ、それぞれに影を作る。伏線もしっかりとしているし、本当に良くできた映画だ。
 展開によってはもっと社会に対しての主張を強められる作品であったにも関わらず、決して声高にはならない。あくまでも静かな展開に徹し、優しく見つめるスタンスを貫く。温かい視線が、結果として観客に情景で訴え、映画としての味わい深さを増している。

 どんなに悪質に見える人間だって、優しさを失ったわけではない。
 どんなに善良に見える人間だって、過ちを起こさないわけではない。
 ある人によってはそれは正義でも、違うある人から見れば悪になる。
 誰だって心に影を落とすものを抱え、誰だって人を傷つけている。
 
 とても共感する内容だ。
 でも、なぜだろうか、この映画の感想としては「よく出来た映画」で自分の中では済んでしまった。「いい映画」であることは間違いない。だけどそれ以上に心が震えるなにかを感じることができなかった。

 人は愚かで、人生は脆く危うい。だが決してそれが全てではない。そういった監督の考えはよく伝わったし、とても共感する。様々な問題を提起するだけの力のある映画だったと思う。
 だがどこかで観たことがあるという感じが否めなかった。概視感だ。どうも物足りない、というか。構成の似ている前述した二作品もそうだし、やんわりと社会問題を提起するやり方などがそう感じたのかもしれない。
 もちろん他のどの映画と比べても優れていると思うし、前述した二作品とは構成は似ているが脚本の緻密さでは何枚もうわ手だ。
 全く関係がなく思えた複数のストーリーが終盤にかけて一気に接近していく様子は圧巻だし、どのエピソードも、国や地域を問わず誰の心にもある、どこでも起こりうる身近な出来事に感じる。きっとアメリカに在住経験があるような人なら、この映画の内容にも訴えかけることにも僕なんか以上に身近に感じただろう。

 だからこそ、もう一歩踏み込んで欲しかったのかもしれない。単純な勧善懲悪の否定も、アメリカの現状も、9・11の影も、すでに認知の事実だ。新しい衝撃と発見を生む問題提起が見当たらなかったのが物足りなさの要因かもしれない。
 例えば人種問題のことをあげれば、自分の中では「アメリカン・ヒストリーX」の衝撃が忘れられない。ただショッキング度が強くて印象に残っているだけかもしれないし、個人的好みによるのだろうけれど、自分の中ではこの映画が投げかけるものが少し霞んで見えてしまった。
 
 キャストはびっくりするくらい豪華で、中でもドン・チードルは「ホテル・ルワンダ」に続く熱演(とアップになるたびに鼻の穴の大きさ)を見せてくれたし、初監督にしてこれだけの作品を作りあげた監督は本当にお見事。温かくて優しくて、でもそんな単純なものだけではない映画だった。

 誰かとぶつかったとき、目を閉じてこの映画を思い出せば、ほんの少しだけふれあいに近づけるかもしれない。
 映画館を出たときに、花粉症による目の痒みに堪えながら、そんなことを思いました。


(2004年/アメリカ/ポール・ハギス監督)

| 映画 ☆☆☆ | 01:39 | comments:1 | trackbacks:2 | TOP↑

COMMENT

TBありがとうございました

私もポール・ハギスの手腕に驚きました。
本当に初監督?老練過ぎます(笑
重すぎず、軽すぎず、実に素敵な2時間でした。

| ノラネコ | 2006/02/24 21:04 | URL | ≫ EDIT















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