【孤独だなんて思ったことはなかった。ずっと一人で生きてきた彼にはそれが当たり前だった。
だがある日彼は人を愛してしまう
幸せを知ってしまう。
そして、かつての自分の孤独を知ってしまう。
もう手放したくない。
あの孤独に戻りたくない。
だが些細なことで幸せは去ってしまう。
今度こそ本当に天涯孤独になる。
なんのために生きればればいいのか。
彼には分からなくなってしまった。
それでも時間は過ぎてしまう。
彼女の服が影となって彼に語りかける。
もう忘れた。
そう威勢を張る事で、毎日を生きる】「トニー滝谷」映画化の話を聞いたときに思ったことは、あの春樹独特の世界観を果たして映像化など出来るのだろうか、そんな不安だった。原作のファンなら誰でもそう思ったはずだ。
だが、どうだろう。
主演二人の静かで淡々とした演技。
美しい風景。
映像を邪魔しない音楽。
静かに語るナレーション。
全てが完璧だったように思う。
春樹の難しい世界をナレーションを使う事によって自然に表現し(西島秀俊のナレーションが抜群によい)、無理なく、過不足なく、素晴らしい映画に仕上げたと思う。原作に忠実で、村上春樹の世界を見事に映像化して見せた。
全ての予想をはるかに超えた傑作だった。
誰でも少しは共感するところのある、愛と孤独と、それに向き合おうとする男のお話。
すばらしい映画であることは間違いないが、僕が思うに、まったく春樹作品を知らない人が見たらどう思うんだろう?
原作の世界を忠実に再現する事を目指したような、映画とは一線離れたこの映画は、もしかしたら春樹作品を知らなくてフランス系の映画も見たことない日本人なら、眠くて眠くて仕方ないのかもしらない。映画を観ているというりより、小説を読んでいるような気分だ。
あと、フランソワ・オゾンの
「まぼろし」に似てたなってちょっと思った。
全編流れる乾いた雰囲気が堪らなく春樹的だった。イッセー尾形の渋い芝居が格好良く、まさに春樹の小説の「僕」であった。

(2004年/日本/市川準監督)
愛人契約100万
一般男性との時間に憧れるちょっと勝気な彼女達
| 不倫 | 2008/08/19 14:51 | URL | ≫ EDIT