2006.10.26 Thu
9/10 ジュウブンノキュウ (シネアミューズイースト)

"次代を担う実力派の若い才能たちが終結し、謎めいたダイアローグの魅力に満ちた、斬新なシュチュエーション・ミステリーを誕生させた。"
公式サイトに書かれたこの文言通り、この映画は新しく立ち上げられた映画製作会社の第一回作品で、出演している役者さんは全員初めて見る顔、脚本を書いた人も監督も映画デビュー作だそうだ。
しかしフライヤーや公式サイトを見る限り、そのセンスはすこぶる良く、かつてないほどに興味をそそられるものだった。それもそのはず、その制作会社を取り仕切っているのは広告業界で名のしれた方なのだそうだ。
だが、宣伝が上手く行けば行くほど観に来る観客の内容への期待は高まる。宣伝と内容にギャップがあれば、当然その振れ幅は大きくなる。
まず、これは映画を観る前から出演者のプロフィールを見て、ほぼ全員が舞台を中心として活躍している役者ということを知っていたから余計にそう感じただけかもしれないが、いかにも舞台調の芝居だった。
もちろんそれが悪いというのではない。"会話劇"を謳うのであれば、舞台調の少し大袈裟なくらいの芝居の方がいいのかもしれない。
だが、いかんせん、舞台だった。映画を観ているという気がまるでしなかった。
脚本、ストーリーに感しては、確かに面白かった。退屈することなく(もともと80分という短い映画だが)観ることが出来た。
語りたいことも良くわかるし、なかなか素敵なラストシーンで締めくくってもくれた。オープニングとエンディングでそれぞれ紹介されるプロフィールなども、斬新なアイディアだったと思う。
だが、ちょっとした心理描写までも台詞に起こし、役者はそれを腹から出すしっかりとした良く通る声で読む。
キャラクター設定は子供じみていてどう考えても25歳の人達には見えない。鑑賞後はあの現実味のないキャラクター設定も計算のうちだったのかもしれない、と気がついたが、映画の大半があんなに現実味のない人物たちの会話劇ではどうにもついていけない。
つまり、ストーリーはそれなりに楽しめるし、脚本も魅力あるものだ。
だが、芝居も演出も脚本も含めて、大味だ。
観終わってから公式サイトを観て思ったのは、ダイアローグ(会話)の魅力に満ちた映画ではないし、全体を通して観ればさほど斬新でもないし、ましてシチュエーション・ミステリーでは全然ない、ということ。
"あらゆる想像力を刺激する結末""すべてのシーンが結末へと集約されていく"とも謳われているが、想像するまでもなく結末はちゃんと提示されてしまっているし、そこに至るまでの伏線も分かり易すぎるではなかろうかと感じてしまった。
出来ればそういう宣伝文句は「STAY/ステイ」とか「隠された記憶」のような映画につけてほしいものです。
個人的には「会話劇」や「シチュエーション・ミステリー」という類の映画は好きだし、トレーラーやフライヤーがとてつもなくハイセンスだったから、否応なしに期待も高かった。
そのせいか、上映中退屈だったわけでは決してないが、この映画のいちばんの魅力はフライヤーでも使われているウサギの写真かもしれない、と映画館を出た時に思ってしまいました(しかもウサギは本編ではほんの数回しか映らない)。
しかしこれだけ格好いい宣伝が出来る会社なので、きっとこれからは本当に面白い映画を作ってくれるだろうと大いなる期待を抱いています。
(2005年/日本/東條政利監督)
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