「本当に心に届く音楽は女の子にしか出来ない」
――前を向き続ける彼女たちの告白 1stアルバム『耳鳴り』では、鋭く緊迫感ある音で女心と苦悩を歌い、ガールズバンドの概念を軽々と飛び越えた。
2ndアルバム『生命力』では、ポップでキュートで親しみやすいのに骨太なロックを体現し、日本中で熱狂的なファンを生んだ。
田舎のバンド少女だった彼女たちがデビューからたった3年で日本武道館の単独公演へと辿り着き、その「奇跡」から丸1年を経て発売されるニューアルバムで、これまでの道筋が結集し、一つの区切りを迎える。発売前からそんなサクセスストーリーが完成しているような気がした。
しかし実際にこのニューアルバムを聞いて、そんな想像は簡単に覆されてしまった。
『CAT WALK』や『8cmのピンヒール』のようなキャッチーな曲の親しみやすさやパワフルさはそのままに、遊び心溢れる『長い目で見て』、キッチンで鼻歌を歌うかのような『LOVE is SOUP』など独創的で挑戦的な楽曲が並ぶ。
中でも、歌詞の洗練には驚かされた。「女子の本音」、ひいては「ヒトの本音」をとても研ぎ澄まされた鋭利な言葉で表現しているのに、その言葉はどこまでもウソがなく、まっすぐで、だからこそ暖かい。
《ねぇ 私のこと 全部わかるって言ったけど あなたなにも見えてなかった》(『8cmのピンヒール』)
《あぁ 今日もこの手で必死に なにか掴もうとしているよ あぁ今日もこの胸は 息を吸っては吐き出して
10分後も10年後も 同じように生きているだろうか》(『CAT WALK』)
《私がいなくなったとしても 3分おきに電車は揺れて きれいにきれいに花は咲き 戦いはやむことなく》(『CAT WALK』)
《明日ダメでも あさってダメダメでも 私を許して それがやさしさ》(『やさしさ』)
『耳鳴り』の一曲目は、上京に際しての戸惑いを歌った『東京ハチミツオーケストラ』だった。
『生命力』の一曲目は、東京の生活に慣れて気付いた家族の温かみを歌った『親知らず』だった。
そして今回の一曲目は、全てを理解し合うことは出来ないと分かりつつも、それでも相手を求め続ける恋心を歌った『8cmのピンヒール』。
この変化を見れば、チャットモンチーの4年間の成長はすぐに確認することが出来る(数年前に悲壮感たっぷりの声で『恋愛スピリッツ』を叫んでいた少女の面影はどこにもない)。そしてこの3曲がすべてポジティブな楽曲であり、今回のアルバムの収録曲も(ディープな言葉や鋭い表現を用いてはいても)結局のところ、全てがポジティブな歌であるというところに、チャットモンチーが多くを人に支持を得ている理由が垣間見える。
CDジャーナルのWEBにアップされている、ハマケン(SAKEROCK)との対談(→
告白(?)対談 チャットモンチー×浜野謙太(SAKEROCK))でハマケンはこんなコメントを残している。
「“本当に心に届く音楽って女の子にしかできないのかな”って思っちゃって」 この発言がとても印象深く、胸に残る。まさにその通りなのかもしれない。素直にそう思えてしまうほどに、このアルバムはポップでキュートなのにどこまでもロックンロールで、聴き手の気持ちを掴んで離さない。
これは彼女たちの今までを振り返り懺悔するような、後ろ向きな「告白」ではない。ましてや、思いを寄せる人に自分の気持ちを伝えるだけの自分勝手な「告白」でもない。これからを見据え、周囲に自分たちをさらけ出して理解してもらい、さらに大きくなるための「告白」。挑戦的で、そっと秘密を打ち明けるようにささやかで、そしてどこまでもポジティブな「チャットモンチーの素直な心情の吐露」だ。
このアルバムは、現時点でのチャットモンチーの最高傑作であることは間違いない。
だけれど近い将来、このアルバムを上回る作品を、彼女たちは再び僕らに聞かせてくれるだろう。
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